根岸昌功先生のご逝去を悼んで

JaNP+ 代表理事 高久陽介

HIV/AIDS診療やエイズ対策に長年にわたり取り組み多大な功績を残された医師・根岸昌功先生が、2026年6月23日にご逝去されたとの報に接し、深い悲しみとともに、先生への感謝と敬意をここに記したいと思います。

根岸先生は、都立駒込病院が1985年にエイズ外来を開設した当初から、日本のHIV医療の最前線に立ち続けてこられた医師です。多くの患者が次々と命を落としていったあの時代から、多剤併用療法の普及を経て、HIV陽性者が長く生きることができる現在まで、その歴史のすべてを患者とともに歩んでこられました。

その後、先生はねぎし内科診療所を開設され、当時はまだきわめて珍しかったクリニックでのHIV診療に踏み出されました。HIV医療は大病院でなければできない、という当時の状況を変えようとするその試みは、クリニックでHIV診療が行われるようになった近年の流れの先駆けとなるものでした。

根岸先生はエイズ&ソサエティ研究会議の代表も務め、定期的に学習会を開催され、JaNP+からも多くの当事者メンバーが参加して、HIV/AIDSの問題について立場の垣根を超えた議論をしたことを覚えています。時にはイベント後の居酒屋での打ち上げまで議論が続いたこともありましたね。先生は、私の世代では知らないエイズパニックの時代に、マスメディアが都立駒込病院に押しかけてきたが公共の場でもあるため退去させることが難しくもどかしい思いをした経験や、HIV陽性者への医療提供に関して起きたさまざまな人権課題について、真剣に、かつ丁寧に教えてくださりました。HIV/AIDSの問題を、個人の視点だけでなく社会の課題として捉えるような問いかけは、歴史を語り継ぐという表現では足らず、私だけでなくHIV/AIDSに取り組む多くの人たちの血や肉となって今でも生き続けています。

行政の専門家会議においても、HIV陽性者の置かれた状況をふまえ、医療が本来どうあるべきかという視点から、つねに当事者の立場にたった意見を発信し続けてくださいました。2000年代はまだJaNP+も立ち上がったばかりで、私たちの意見を医師の立場からも後押ししてくださったことは、どれほど心強いものであったかわかりません。

先生が言葉と行動で残してくださった全てに、感謝をお伝えしたいです。どうか安らかにお休みください。

高久陽介(JaNP+ 代表理事)

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